南東アフリカで食べたもの

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マラウィ通り抜け

マラウィについてご紹介すると言ってもほとんどの方は、この国の名前を聞いたことがないと思う。
マラウィはアフリカ南部に位置し、タンザニア、モーリシャス、ザンビアに囲まれた内陸国である。
この国は、発展途上国の中でもさらにLDC(後発開発途上国)に分類される最貧国(一人あたりGNI約550米ドル:2020年)。人口の90%が農業に従事。主な産業は農業で、他に産業といったものは殆ど皆無。その農業も天水農法で、その年の雨量などに生産が大きく左右される。そんなマラウィの標準的な農地の風景が次の写真。
手前にはトウモロコシ畑が広がっている。日本の畑のように整然としていないのでまるで荒れ地のように見えるが、これがこちらの典型的な畑。

画面の中央を東西へ流れるのがリロングェ川(Lilongwe river)で、世界遺産のマラウィ湖を水源とする。マラウィ湖は南アフリカを縦断する7000キロに渡る大地溝帯の南側に位置する南北約600キロの淡水湖で、魚種の豊富さが有名。中でも、口内飼育をするシーグリッドは800種類以上確認されている(次の写真はナショナルジオグラフィックより)。

国内ではトウモロコシに加え、様々な農作物が栽培されている。大豆、ピーナッツ、カシューナッツなどの豆類、トマト、玉ねぎ、ジャガイモ、コメが主流。米の栽培はここ10年アフリカ全体で急速に拡大しており、マラウィも同様。品種は従来のアフリカ米とアジア米を交配して作った新品種のネリカ米(Nerica)。施肥量が他の米に比較して50%も削減でき、病気に強く、単位面積あたり収穫量が多く、栽培時間は2割短く、蛋白質含有量は他品種より2割高く、しかも田んぼでは無く畑でも栽培できるという、いわばアフリカの救世主的な米である。特に、マラウィでは肥料を100%輸入に頼っているため、ウクライナ戦争の影響を多少なりとも軽減する。食味はタイ米のような長粒種ではなく日本米に近い中粒種で、ぱさぱさしていないので、我々には馴染みやすい。

ヒマワリのような油糧植物も生産しているが、天水農法、機械化の遅れ、肥料・農薬の輸入依存などにより生産性が低く、市場価格も途上国とは思えぬ程高価である。
これは道路際でよくみられる市場の様子で、車中からの撮影。車から降りた途端に多くの売り子に囲まれる。ドライバーが、物価が高い町よりも地方の露天市場が安いということで、たまたま立ち寄った。こんな直射日光下に商品を並べても傷まないのかちょっと心配になります。なぜタワーのように積み上げなくてはならないのかは謎。商品を積み上げることで、商品の元気(品質)をアピールしている?茣蓙の上に地面と同じ色の甘藷が無造作に置かれていても、今晩は甘藷料理にしたくなるようなアピールは感じない。

これは典型的なこの国での食事。

白いモチのようなものは、ここではシマ(NSIMA)と呼ばれているトウモロコシの粉で作った主食。名前は違うが、アフリカのこの地域ではシマが広く食べられている。左上は魚の煮込み、その右横はおそらくオクラ。典型的な食事とは書いたが、どうやら一般の人は、このような食事をいつも食べているわけではないようで、家ではシマと1-2品の野菜とか、シマのみといった食事が標準。牛も豚も魚もあるが、一般家庭ではそれほど食べていないのではないかと思われる。

ザンビアで考えた
偶然にもマラウィの西隣にあるザンビアへ長期滞在したので両国の比較を通じて東南アフリカの食、産業そしてウクライナ戦争の影響について言及したい。

ザンビアも主食はトウモロコシを原料としたシマである。マラウィ同様農業国だが銅鉱山を有し輸出の主力商品に成っている。また、石灰岩も豊富に産出するため、セメント産業も盛んである。ザンビアもマラウィ同様LDCの貧困国。GNIは2007年までLDCの範疇で、2008年以降2020までLDCを卒業していた。しかし、2021年にLDCに逆戻りしている。スリランカ同様中国の債務の罠に引っ掛かったとする評価もある。何故なら対外債務の3分の1が中国だから。一説には銅鉱山の利権を手中に収めることを狙っているとも。

トウモロコシ生産については、大河ザンベジ川を水源として灌漑施設を開発し、大規模商業生産を行っているところもあり、その景色はアメリカの中西部で良く見かける農場と見まがう程。

小作農家のトウモロコシ畑は概ねマラウィと同じ景観になる。

小麦の価格は確かに上昇しています。しかしパンの価格高騰で市民の不満が高まっているとの話は聞こえてこない。ザンビアの主食がトウモロコシ粉を練って餅状にしたシマだから。
食用油に関しては、ザンビアの食卓にはチキンや淡水魚のフライが良く並び食用油は調理の必需品となっている。しかし、最もポピュラーな食用油はココナツ油と落花生油であり、ひまわり油は主流ではない。


このような事から、食料に関してはウクライナ侵攻の影響は感じられない。

ガソリン価格についても、2022年当初からの上昇率は10%未満であり、国民の不満を招く程のものではない。値段の高騰はウクライナの影響というより、政府の財政赤字によって為替安が続いていることが大きい。
ウクライナ侵攻で最も影響を受けているのは肥料である。ロシアからの肥料輸入が滞っているため、農業生産への影響を考慮して有機肥料の促進を政府は呼びかけている。

エスワティニを食する
エスワティニ(Eswatini:旧スワジランドは南アフリカとモザンビークに挟まれた内陸国の小さな王国)での食事は、パン食を中心とした西洋食が普及し、ピザなども広くたしなまれているが、現地の主食はポリッジ(Porridge)と呼ばれるメイズ(maize:食用のトウモロコシ)を挽いた粉を熱しながら熱湯で練ったものである。ケニア・タンザニアで“ウガリ”、モザンビーク・マラウイでは“シマ“と呼ばれているが、ケニア・タンザニアの”ウガリ“のように若干粗挽きでぼそぼそとしており、”シマ“のようなしっとり感はない。

おかずは、内陸国からか魚が出てくることは限定的で肉が中心で、種類は牛・ヤギ・豚・鳥である。特に牛については放牧されるスワジ牛が有名で、赤身が中心の肉であるが、硬すぎずおいしい肉で日本人にとっても食べやすい肉である。部位については肉屋で確認できたのは、身の部分が中心で内臓に関してはハツ(心臓)牛足のみで、その他の内臓等に関しては

肉屋ショーケース

どのように流通しているか把握できていない。

右の食事の写真は、肉屋(Butchery)で好きな肉を選んで、併設される厨房でグリルしてもらい、ポリッジと共にサラダ等の付け合わせを注文したもの。数人での会食の際の食事方法として一般に親しまれる形態である。特にソーセージは脂身の量が多いもの、少ないもの、また肉の挽き方の程度(粗い・細かい)が異なる数種類があり、それぞれ異なる味を楽しむことができる。中高年にとっては、肉食が続くと胃腸が疲れてしまうので、色々な部位を少しずつ、付け合わせの野菜と共に味わってみるのはどうだろうか。


ジンバブエを食する
マラウイ、ザンビア、エスワティニと続いたので隣国ジンバブエもついでに紹介する。しかし、ほんの数百歩足を踏み入れただけなので、仮想旅行記録になる。

先に紹介した3ヶ国同様主食はトウモロコシ粉をお湯で溶いて練り上げたサザ(Sadza)である。ザンビアやマラウィでシマと呼ばれるものと同じです。基本、おかずの味を引き立てる役目ですので、ほんのりとトウモロコシの味がするようなしないような、殆ど無味である。食感はういろうをもう少し柔らかかくしたものを想像して欲しい。

このサザと共に食されるおかずもほぼ近隣国と類似しており、チキンのトマトソース煮や青菜(見た目は大根の葉っぱ)の炒め物、山羊やビーフの炭火焼きまたはシチューなどです。さかなは余り出てきません。内陸国ですから、テラピアが主流となるでしょう。しかし、ザンベジ川には次のような魚もいるようで、一回食してみたいものです。

山羊は、沖縄県で食べたときは臭みが気になったが、こちらは無臭だ。個人的感想としては、こちらの山羊肉の方が好きだ(沖縄ごめん)。

やはりと言っては何だが、マラドゥというイモムシも食されている。見た目はグロいが味は乾燥エビ。東南アジアや南太平洋でも結構昆虫や虫類を食したけど、こちらが一番美味いかも。

ウガンダ、何を食べようか?






ウガンダは、10年ほど以前の訪問をベースに作成。写真も消失したものが多いので、記事に合わせてウェブから調達したものが殆ど。それでもウガンダを紹介したいのは、同国に魅力あふれる食があるから。

ウガンダは気候と水資源に恵まれ、食料自給力が高い国。また、鉱物資源にも恵まれ2020年の統計ではウガンダからの全輸出の59%が金で、次いで伝統産品のコーヒー(9%)となる。

ウガンダは琵琶湖の100倍の広さをもつビクトリア湖に面し、さらに年間降水量も1200mmで安定しており営農環境としては恵まれている。しかし、灌漑インフラの未整備、稚拙な農業技術、自給目的農業が主体となった低い生産性、バリューチェーンの未整備(一例として流通が整備されていないため、生産地から消費者へ届けられる過程で約30%がスポイルされている。

さて、主食ですがメインはやはりトウモロコシ粉を湯で練ったもの、ウガンダではウガリと言う。しかし、これまで紹介したタンザニア、ザンビア、マラウィ、エスワティニと違ってウガリと同じようにマトケ(デンプン質の多いバナナ)と米が加わりる。紹介するプレートの真ん中の白いかるかんのようなものがウガリで、左上のちょっと黄色の練り物がマトケ、そしてその右隣が米(インディカ種:タイ米の類)である。

私が特に紹介したかったのがウガンダドーナツです。露天でも普通に売られている三角計の揚げパンの進化形だと思いますが、宿泊していたホテルで売られていたものは、まさに沖縄のサーターアンダギー以外の何者でもなかった。

その他にも、薄くのばしたナンに卵を挟んでロールしたもの(ロレックス)や、モツ煮込み、豆スープ、サモサ、魚のフライ等々何でもおいしい。しかもビールに合う。

“南東アフリカで食べたもの” への4件のフィードバック

  1. 原のアバター

    とても興味深いです。これからも新しい食文化を紹介して下さい

  2. salonNSKのアバター
    salonNSK

    他の国の情報もアップしてください。

  3. mutsuのアバター
    mutsu

    アフリカ料理はエチオピア料理くらいしか食べたことがありません。
    記事を読んで興味が湧きました。
    特にウガンダ料理にそそられます。
    調べると相模原市に日本唯一のウガンダ料理店があるようです。
    ぜひ行ってみたいです!

    1. salonNSKのアバター
      salonNSK

      相模原は政令指定都市ですが、都心では無くて相模原というのが驚きですね。チャンスがあれば寄ってみたいですね。

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